専門医制度について簡単に解説してみた

医学生なら少しは考えたことがある「専門医制度」。

近年になって新しくなったって聞くけど今はどうなってるの?

ところが、上のように専門医制度があることは知っていても、その内容をあまり知らないという人は多いのではないでしょうか。

今回は専門医制度を全然知らない、存在は知っているけど詳しくは知らないという方に向けて簡単に現在の専門医制度について主に内科に的を絞って解説していこうと思います!

専門医制度とは

そもそも専門医制度とはどういうものなのでしょう。

大学病院にいる消化器内科、消化器外科、循環器内科、心臓血管外科、耳鼻咽喉科、皮膚科…といった科の先生方は基本的にその科の専門医を持っています。医師免許を取得した人全員がこうして専門医を名乗れるわけではありません。

これは専門医制度の研修を受け試験に合格した人たちです。

医学生は6年間の大学生活を終え卒業試験、国家試験に合格して医師免許を取得した後に大半の人が2年間の初期研修を受けます。その研修を終えた後関わってくるのがこの専門医制度になるわけです。

つまり専門医は医師免許に身につける装備みたいなもので、それを取得するために関わってくるのがこの制度だと捉えてください。

後期研修医とは今は言わない?

さて、この専門医制度ですがどうやって利用するのでしょうか?

まず2年間の初期研修中に志望科の学会に登録して希望病院に応募して面接などの試験を受けます。合格したら初期研修を終えた後専攻医として働くことになります。

昔は2年間の初期研修医に対して後期研修医と呼ばれていましたが、今では専攻医という言い方が正しいです(今でも後期研修医と呼ぶ人はいますが)。

じゃあただ名称が変わっただけ?

と言いたいところですが、これだけではありません。現在の専門医制度にはかなり大きな特徴があります。

階層構造になっている

近年になってから新しくなったこの専門医制度ですが、どう変化したかというとずばり「めんどくさくなった」ということです。

実はこの専門医制度、階層構造になっています。階層構造とはどういうことかというと、2階建てのアパートみたいな構造だということです。

専門医制度は1階(19の基本領域)2階(サブスペシャリティ)で構成されており、専門医を取得する場合1階の基本領域をクリアするのは必須で、それを飛ばして2階に行くことはできないということです。

厚生労働省 サブスペシャリティ領域の専門研修について(https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000492681.pdf)より引用

これが大変ネックです。特に内科でこの階層構造によって志望する人が減っているほどです。

なぜかというと、例えば循環器内科専門医を取得したいと思っても、循環器内科はサブスペシャリティに属しており、まず基本領域の内科専門医を取得しないといけないからです。

つまり循環器内科を取得しようとした場合、まず内科全般ができないとダメと言うことになります。

そりゃあ循環器内科専門医になるんだから内科全般ができないといけないだろ!

こう考える人もいらっしゃるかもしれません。

しかし、消化器内科を取るために志望科でない内科も勉強しないといけないというのは人によっては負担が大きいです。

基本領域の内科を取得するのに3年、サブスペシャリティの循環器内科を取得するのに基本3年かかる(内科標準型の場合)ので最短でも合計6年かかります。まずそれまでに6年間の大学生活、2年の初期研修があるので、現役合格で医学部に進学しストレートでいっても循環器内科専門医を取得する頃には32歳という計算になります。

そしてようやく循環器内科専門医としてスタート地点に立てるわけです。

これをどう捉えるかは人それぞれですが、正直結婚を考えている女医には特にかなりきついものだと僕は思っています。

基本領域は「プログラム制」という決められたカリキュラムに従って働くので、6ヶ月以内の中段であれば研修期間を延長しなくても取得は可能だとされています。

ところが、妊婦にとって半年の中断でまた職場に元通り復帰できるかと言われれば体力的に全員は無理ですし、症例登録数が定められている関係上半年も空くとかなり厳しいので、あらかじめ計画のもと妊娠しないとかなり専攻医としての継続は難しいと僕は感じました。

男の僕でも、自分と興味のない分野も含めてここまでの年数を費やすのはきついです。

ここで出てくる症例登録について補足を入れておきます。症例登録とは自分が専攻中に経験した症例の病歴を要約して指導医やプログラム統括責任者、査読委員(上のお偉いさん)に提出・評価してもらうことです。
経験する症例数、病歴提出数というのは分野によってかなり細かく決まっています(内科専門医の場合)。

もともと循環器内科志望で早く循環器内科専門医を取得したい場合は、初期研修・内科専攻医の頃から専門研修の症例登録として読み替えてくれる制度(サブスペシャリティ重点型)があるのでそれを利用するというのはありかもしれません。

が、どの内科に行くというところまで最初から決まっている人は少ないので大半は6年の内科標準型で取得することになるでしょう。

となると、この年数は馬鹿にできるものではないと思います。

研修施設は基本大学病院

またネックになってくるのが基幹施設です。専門医を取得するためには基幹施設での研修と基幹施設との連携施設とで研修を行う必要があります。

基幹施設とは大きな施設で、珍しい症例が集まる施設だと捉えて問題はありません。一方連携施設は地域医療を主に担う施設が多いです。

ここで問題なのが基幹施設に設定されているのが大半が大学病院ということです。

専門医を取得するためには、大学病院の医局に入りたくないとしてもそこで研修をしなければいけません。

これが人によってはきついところです。

大学病院に入局する人は構いませんが、緩くやっていきたい人にとっては「入局しない」という堅い意思を持ち続けないと、「気付いたら医局に入っている…」ということになりかねないので注意してください。

もちろん、基幹施設というのは大学病院以外にも大規模の病院も登録されているので、知りたい方は学会のホームページを見れば確認することができます(例えば循環器内科専門医なら日本循環器学会のホームページを参照)。

マイナー科はどうなのか

ということで〇〇内科専門医になるためにはまず内科専門医を取得することが不可欠です。外科に関しても同じで、まずは外科専門医を取得してやっと心臓血管外科といった専門医を目指すことができます。

では世間でよく人気と言われるマイナー科はどうなのでしょうか?

マイナー科というのは整形外科・皮膚科・眼科・耳鼻咽喉科・放射線科・泌尿器科・精神科といった科を指します。

実はマイナー科に関しては基本領域に最初から存在しているのです。

そのため、マイナー科を志望した方が最初から自分の興味のある分野を専攻することができます。さらに、マイナー科は基本領域にあるので○○内科専門医を取得するよりも早くマイナー科の専門医を取得することができるのです。

他にも理由はあるでしょうが、こうした専門医になる年数が短いというのもマイナー科が人気だと言われている所以でしょう。

興味のある科の学会を見てみよう

ここまで専門医制度とはどのようなものか簡単に見てきました。

今回話したことは制度をかなりおおまかに伝えています。科によってはここで述べたことと異なる点があるかもしれませんので、そこはご了承ください。

この記事で伝えたいのはぜひ自分の興味のある科の学会のホームページを見てほしいということです。

自分の希望する科はどれくらいで専門医を取得することができるのか、また基幹施設はどこなのかそういったこれから先のことを少しでも考えるきっかけになれば嬉しいです。

どこにも興味がないという人はまずはマイナー科の学会のホームページから見てみるのもありかもしれません。

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