【エビデンスから考える】投資について気を付けたいこと

近年になって投資を始めた、または投資に興味を持つ医学生・医師が増えました。

これは老後2,000万円問題や年々増加する医療費問題、年金問題などが浮き彫りになったことを受け自分の資金について改めて見直す人が増えたからではないかと考えています。

もちろん、僕もその一人です。

しかし、投資といってもただやみくもにやれば儲かるというものではありません。

この記事ではそうした投資、特に株式投資に関してエビデンスという観点から注意喚起をしていきます。

投資で100%はない

今回言いたいことはずばり「投資で絶対儲かるとは限らない」ということです。

え、でも同期が儲けてるし、本にも「こうすれば儲かる」って書いてあるし投資すれば大丈夫なんじゃないの?

確かに周りの人は儲けているかもしれません。しかし、その人は「たまたま」運が良く儲かっただけです。

その人たちと同じことをすれば必ず儲かるとは限らないのが株式投資というものです。

エビデンスとは?

さて、話を進めていく上でまずおさえておきたいのが「エビデンス」です。これは医学生や医療者ならよく聞く言葉かもしれないですが、ここで改めて確認しておきます。

エビデンスevidenceとは、そのまま和訳すれば「証拠」という意味です。

では、どんな証拠かというと研究や実験によって裏付けされた科学的証拠のことを指します。もちろんエビデンスには他の意味合いも含まれますが、ここではこうした科学的証拠だと捉えてください。

医療ではエビデンスというのが非常に大切になります。

例えば、「EBM」という言葉があります。これは「evidence-based medicine」のことで、直訳すると「エビデンスに基づいた医療」という意味です。

ある疾患Xにかかった患者に対してAとBという2つの治療薬があるとします。どちらが患者に副作用が少なく治りやすいかということを考えたときにやみくもに決めるのではなく、Xについてのガイドラインや論文を参照して患者により適した治療薬を選択します。これが「EBM」です。

この思考はどの医師が診療しても同じ治療薬を選択することになります。このことを「再現性が高い」と表現します。

「ある人の成功法」はエビデンスがないに等しい

エビデンスありきの考え方を他の分野にも応用してみましょう。

株式投資がその中でもとても良い例で、「エビデンスはあるか?」ということを念頭におくと書店に置いてあるほとんどの本を斬ることができます。

大半の本が「俺はできた!〜流株式投資術」「絶対稼げる!〜式株式投資」といったもので構成されていることに気がつくはずです。

これはあくまでその著者個人の体験(n=1)であって、再現性がほとんどありません。

つまり、エビデンスがないに等しいのです。

医療ではエビデンスレベルというものがあります。エビデンスの高さを1〜6まで表現したもので、個人の体験、教授の意見はエビデンスレベルが6と一番低くなっています。

株式市場で勝つかどうかは運

また、株式市場というのは運に左右されるところがあります。

コロナ渦が良い例で、去年の今頃にまさかこんなことが起きるとは誰も予想していなかったと思います。

四季報や決算書、PERなどの指標を見ればある程度株価は予想できるぞ!

確かにそういう意見はありますが、株価が上がるかどうかは最後は結局「運任せ」です。

経済学的に言えば株式市場というのはプロのトレーダーなどによって常に最適化されていて、我々素人が手を出すときにはどうしても確率論になってしまいます。

投資で「絶対」はないことを念頭においておく

こうしたことを踏まえて、株式投資を始めとした投資でおさえておきたいのは個々人の意見・体験はエビデンスが低いことを踏まえた上で投資関係の本・サイトを見ることです。

「多くの投資家が同じことを言っているからこのやり方は正しそうだな」と吟味した上で投資を始めてほしいと思います。

もちろん、そうした色々な人の意見をまとめた本があることは重々承知しております。

全ての投資に意味がないと断言する意図はないのでご了承ください。

参考文献
・藤沢数希『なぜ投資のプロはサルに負けるのか? あるいは、お金持ちになれるたったひとつのクールなやり方』ダイヤモンド社、2006年

・橘玲『新版 お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 知的人生設計のすすめ』幻冬舎、2017年

スポンサーリンク
おすすめの記事