
アトピー性皮膚炎と異なり、乾癬にはたくさんの生物学的製剤(バイオ)が存在します。
昔から皮膚科医であればその歴史も知っているため覚えることに苦はないと思いますが、私のように最近皮膚科医になったものとしてはたくさんの種類がありすぎて「何がなんだか、、、」状態になっています。
乾癬バイオにはIL-17、IL-23、IL-12/23、TNF-α阻害薬がありますが、今回はスピード感のあるIL-17製剤に絞っておおまかに解説します!
作用機序に着目してみよう
IL-17の阻害、というイメージはありますが、各製剤のなかで具体的にどこをブロックするのか、ということに着目したことはありますか?
私自身は皮膚科医1年目の頃はそんなことを考える余裕もありませんでした。
以下簡単に書いてみます。
ルミセフ(ブロダルマブ):IL-17受容体に対する唯一の完全ヒト型抗体製剤
コセンティクス(セクキヌマブ):IL-17Aに対する完全ヒト型抗体製剤
トルツ(イキセキズマブ):IL-17Aに対するヒト化抗体製剤
ビンゼレックス(ビメキズマブ):IL-17A/Fに対するヒト化抗体製剤
-umab:完全ヒト型抗体、-zumab:ヒト化抗体であることを知っていると覚えやすくなるので、一般名も少しずつでいいので覚えておくといいでしょう。
投与間隔に着目してみよう
また、投与間隔に着目することも重要です。
以下添付文書から引用します。
ルミセフ
通常、成人にはブロダルマブ(遺伝子組換え)として1回210mgを、初回、1週後、2週後に皮下投与し、以降、2週間の間隔で皮下投与する。
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00071732.pdf
コセンティクス
〈尋常性乾癬、乾癬性関節炎、膿疱性乾癬〉
通常、成人にはセクキヌマブ(遺伝子組換え)として、1回300mgを、初回、1週後、2週後、3週後、4週後に皮下投与し、以降、4週間の間隔で皮下投与する。また、体重により、1回150mgを投与することができる。
通常、6歳以上の小児にはセクキヌマブ(遺伝子組換え)として、体重50kg未満の患者には1回75mgを、体重50kg以上の患者には1回150mgを、初回、1週後、2週後、3週後、4週後に皮下投与し、以降、4週間の間隔で皮下投与する。なお、体重50kg以上の患者では、状態に応じて1回300mgを投与することができる。
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00070620.pdf
トルツ
〈尋常性乾癬、乾癬性関節炎、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症〉
通常、成人にはイキセキズマブ(遺伝子組換え)として初回に160mgを皮下投与し、2週後から12週後までは1回80mgを2週間隔で皮下投与し、以降は1回80mgを4週間隔で皮下投与する。なお、12週時点で効果不十分な場合には、1回80mgを2週間隔で皮下投与できる。
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00071751.pdf
ビンゼレックス
〈尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症〉
通常、成人にはビメキズマブ(遺伝子組換え)として、1 回320mgを初回から16週までは4週間隔で皮下注射し、以降は8週間隔で皮下注射する。なお、患者の状態に応じて16週以降も4週間隔で皮下注射できる。
〈乾癬性関節炎〉
通常、成人にはビメキズマブ(遺伝子組換え)として、1 回160mgを4週間隔で皮下注射する。
〈化膿性汗腺炎〉
通常、成人にはビメキズマブ(遺伝子組換え)として、1 回320mgを初回から16週までは2週間隔で皮下注射し、以降は4週間隔で皮下注射する。なお、投与間隔は患者の状態に応じて適宜2週間隔又は4週間隔を選択することができる。
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00071620.pdf
尋常性乾癬に対して、維持期の投与間隔をまとめると以下の通りです。
ルミセフ(ブロダルマブ):2週間
コセンティクス(セクキヌマブ):4週間
トルツ(イキセキズマブ):4週間(or 2週間)
ビンゼレックス(ビメキズマブ):8週間(or 4週間)
投与間隔を見ると、乾癬に対して8週間間隔で投与可能なのはビンゼレックスのみであることがわかります。
皮膚科では外来患者数がどうしても多くなりがちなので、その人数を少しでも減らせること、投与間隔が短いと患者からは痛い回数が多くなることに留意したいところです。
適用年齢に着目してみよう
また、乾癬のバイオについて重要なのは適用年齢です。
さきほどの添付文書を見ると、基本的に成人(15歳)以上が適用となっていますが、コセンティクスのみ6歳以上の小児に適用があります。
小児発症の重症乾癬に対して用いることができるIL-17製剤のバイオはコセンティクスのみ、というのも大きなポイントになるでしょうか。
患者の最終目標に着目してみよう
また患者の目指したいゴールに着目することも大切です。
例えば、「注射の打つ回数が一番少ないもので皮疹を良くしたい」という要望があったとしましょう。
その場合、選択肢となるのは維持期の投与間隔が最も長いビンゼレックスが候補になります。
とはいっても、投与間隔だけでみればIL-23製剤の方が8週間〜12週間間隔となるためベターではありますが、、、。
そのほか、「関節症状をどうにかしたい」ということであれば、トルツやコセンティクスは関節性関節炎に対するエビデンスが豊富であることからオススメされます。
ちなみに、乾癬という病気は希死念慮や自殺企図を及ぼすことがある疾患として知られていますが、ルミセフのみ添付文書で自殺企図を起こすことがあると記載されているため、精神科疾患を持っている場合には避けておきたいところです。
副作用を覚えよう
ただし、効果が大きいとされるIL-17製剤でも弱点があります。
それは口腔カンジダ症が起こりやすいという点です。
この点をあらかじめ説明しておかないとあとでトラブルになる可能性があります。
また、聞いた話では口腔カンジダ症はなくても人間ドックの上部消化管内視鏡で食道カンジダ症を指摘された、というケースもありメリットばかりではないことについてはよく押さえておきたいポイントです。
おわりに:まずは「自分の武器」を磨くことから
正直、私も最初は「これ全部覚えるの?」と気が遠くなりました。
でも、こうして整理してみると、それぞれの薬剤に「選ばれる理由」があることがわかります。
病院によって採用されている薬が限定されているのは、単なる大人の事情だけでなく、「その施設で副作用を含めたマネジメントが最も確立されているから」という安全面での信頼の証でもあります。
最初からすべてを完璧に使いこなす必要はありません。
まずは自施設にある1〜2種類を「自分の確実な武器」にすること。
そこから少しずつ知識の地図を広げていけば、いつの間にか「何がなんだか、、、」の状態を脱出できているはずです。
私もまだまだ修行中ですが、一緒に乾癬治療を頑張っていきましょう!
皆さんの施設ではどのバイオをメインで使っていますか?
もしよければコメントで教えてください!








